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無節操一代女のつれづれなる萌ブログ
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さんしらの続きです。

三太郎につれられてやって来たのは、どこにでもあるうどんのチェーン店だった。三太郎のマンションから歩いて約2分、角を曲がってすぐという近さである。「目立ちすぎるから」という理由で、不知火の帽子は三太郎宅に預けて行くこととなった。
気分どん底の不知火は、全く食欲など沸いてはいなかったが、ドアをくぐった瞬間漂う鰹のきいた出汁の匂いに空腹感を呼び起こされ、気がつくと牛丼とうどん のセットのチケットを購入していた。二人はさっさと席に着くと、運ばれてきた茶を一息で飲み干した。どうやら喉が渇いていたらしい。三太郎は更に出された おしぼりで顔を拭きまくり、うおーともふおーともつかないため息を吐き出した。
「…おっさん臭い真似をするな」
「ほっとけ同級生。…いや、よく考えたら起きてからまだ顔洗ってなかったんだよな。お前も拭いとけ。なんか顔がくすぼってるぞ」
「うるさいわ」
言いながら、不知火は何かを忘れていたことを思い出した。
「それよりも、おれはまだ聞いてない。言え」
「何を?」
「ゆうべ、何があったか、だ!」
だん、と不知火が机を叩く。振動でコップが倒れそうになり、三太郎は慌てて支えた。
「あっぶねーなー…つうか、声でけえよお前」
「う…」
不知火は思わず店内に目を走らせた。平日の昼間、しかも中途半端な時間ということもあってか客は少なく、それで余計に声が響いてしまったらしい。こほん、 とわざとらしく小さな咳をし、気を取り直すようにお茶を飲み干した。そんな不知火の様子を、相変わらずのほほんとした表情で三太郎は見つめていた。
「…こだわるねえ、お前さんも」
「当たり前だ!」
「ふーん」
少し考えるように顎の無精ひげをぼりぼりとかくと、三太郎は顔を上げた。
「ま、いいか。そうそう、夕べの事だけどな…」
「おお」
不知火が身を乗り出し頷く。が、次の瞬間「おまたせしましたー」という店員の兄ちゃんの声に出鼻をくじかれることとなってしまった。
「うぬう…」
目の前で湯気をたてるうどんと牛丼を、不知火は苦々しい思いで見つめた。
「ま、とりあえず、食うべ」
ぱきんと割り箸を割りながら、三太郎がにぱりと笑う。不知火も渋々丼を引き寄せ、牛丼を一口頬張り、その美味さに少しだけ驚いた。どうやら、自分で自覚していた異常に腹が減っていたらしい。
「七味取ってくれ」
「おう」
三太郎から手渡された七味をうどんに振りかけると、出汁を一口すすり、またしても鰹と昆布の旨みに食欲を奮い立たされた不知火だった。
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